【Part 2】出航!旧江戸川から始まる東京水路めぐり 完
🧭 そしてここから、いよいよ後半戦へ──
スカイツリーを背に、来た道を折り返していく復路のルート。
とはいえ、ただ戻るだけではありません。
京成橋の“超狭水路”をはじめ、小名木川、扇橋閘門、そして大横川へと続く道のりは、前半とはまた違った難所と発見の連続。
江戸の水運インフラの名残と、現代都市が共存する南下ルートの魅力に迫ります!
◆ 京成橋の下は超狭水路!慎重に、慎重に…
スカイツリーを後にしてきた道を戻ると、まもなく現れるのが京成橋。
この橋の下は、今回のクルーズの中でもトップクラスに狭い水路のひとつ。
写真を見てもらうとわかる通り、両岸が迫っていて、船体とのクリアランスがかなりギリギリ。
操船中は左右をキョロキョロしながら、常に“フェンダー大丈夫?”“ぶつけてない?”と緊張の連続でした(笑)
こういう場面では、スピードを抑えて冷静に、でもしっかり操作する集中力が大切。
ちょっとしたアトラクション気分も味わえる、忘れられない通過ポイントです!
◆ 横十間川を南下、小名木川へ合流──クローバー橋をくぐる
スカイツリーを後にして、京成橋の下を慎重に通過したあとは、横十間川をまっすぐ南下していきます。
そして横十間川の終点、小名木川との合流地点に差しかかると見えてくるのが「クローバー橋」。
4方向の川をまたぐユニークな構造が特徴で、橋の上は歩行者専用の展望空間にもなっているそうです。
川の上から見上げると、そのシルエットが印象的で、街と水路が交差するこのあたりのランドマーク的な存在感がありました。
◆ 小名木川〜扇橋閘門:江戸から続く水の道を行く
小名木川は、江戸時代初期(1600年代初頭)に徳川家康の命を受けて開削された人工運河です。
行徳から江戸に塩や年貢米を運ぶために作られた、東西をつなぐ水運の要でした。
その名の由来は、この運河の開削を担った「小名木四郎兵衛(おなぎ しろべえ)」という人物の名にちなんでいます。
彼の尽力によって完成したこの運河は、江戸の物流を支える大動脈となり、今でも彼の名前が川の名前として残っているのは、その功績の大きさを物語っています。
川の途中にある扇橋閘門は現役で稼働している数少ない閘門のひとつです。
この写真は閘門に入る直前の様子ですが、🚨実はこの場所がかなり大変でした。
水門の前は水流が複雑に渦を巻いていて、船を止めたままにしておくのがとにかく難しい!
少しでも気を抜くと前後左右に流されそうになるので、スロットル操作で微調整しながら現状維持…
操船テクニックが問われる緊張のひとときでした!
◆ 大横川にかかる歴史的トラス橋──福寿橋と大栄橋
扇橋閘門を抜け、すぐに左折して大横川へ。
すると連続して現れるのが、トラス構造の鉄橋──福寿橋と大栄橋です。
【写真①:福寿橋】
【写真②:大栄橋】
あとから調べてみると、どちらも昭和4年(1929年)に架けられた、関東大震災後の復興橋梁であることがわかりました。
橋の構造や歴史に興味がある方には、ぜひ見逃してほしくないスポットです。
◆ 仙台堀川:釣り好き必見!?末広橋の秘密
仙台堀川を進んでいくと、やがて現れるのが末広橋。
一見するとごく普通の橋ですが、ここで釣り好きの先輩が「あ、ここは釣れるんですよ」と反応されました。
お話をうかがうと、末広橋は“おかっぱり”(陸からの釣り)でもよく知られたポイントとのこと。
「橋の下って日陰になってて魚が休みやすいんですよね」と先輩。
さらに橋をくぐるとき、水面下の岸壁を指さしてこうおっしゃいました。
「あそこ、くぼんでいるのが見えますか?
ああいう場所に、魚が溜まりやすいんですよ。なるほど、これが理由だったんですね」
普段から釣りをされている先輩も、橋の下側を見て納得されたようでした。
◆ 大島川水門を抜けて、いよいよ隅田川へ
平久川を抜けて再び大横川へ──そして旅の終盤、
最後にくぐるのがこの大島川水門(おおじまがわすいもん)です。
無骨で力強いこの水門は、台風や高潮による隅田川からの逆流を防ぎ、運河側の街を守る役割を果たしています。
特に海抜ゼロメートル地帯の多い江東区では、こうした水門の存在が防災インフラとしてとても重要です。
ちなみに「大島川水門」という名前、ちょっと不思議に感じるかもしれませんが──
これはかつて大横川が、場所ごとに「大島川」「横川」などと呼び分けられていた時代の名残。
現在では全体が「大横川」という名称に統一されていますが、こうした旧称からも地域の歴史を感じられますね。
この水門を抜けると視界が一気に広がり、いよいよ隅田川の大きな流れへと合流していきます。
静かな運河の旅から、都市河川へ──その切り替わりの瞬間もまた、印象深い体験でした。
◆ 墨田川へ!緊張からの開放、そして爆発する安堵
大島川水門を抜けて視界が一気に広がると、そこは東京の大動脈・隅田川。
長かった“浅くて狭くて橋だらけ”のルートを終え、ようやく到達したその瞬間──
ついに、先輩の感情が大爆発しました。
「怖かったーーー!!!!!!」
「でも墨田川まで来たので、これからは安心です!!!」
その叫びが、操船席から空に突き抜けていくような勢いで響きました(笑)
というのも、今回のクルーズはちょうど干潮のタイミングで、
北十間川から大島川水門までの区間はところどころ水深が1メートルを下回る状態。
狭い川幅に加えて橋の多さ、水の浅さ、工事区間のロープ…と、まさに“緊張感MAX”なエリアを、
先輩と交代しながら慎重に操船してきました。
とはいえ、干潮だったからこそのメリットもあり、
橋のクリアランスが普段より確保できたため、低い橋の下もギリギリ通過可能だったのは大きな収穫。
自然条件と調整しながら進むこの感覚こそ、水上ルートならではの面白さだなと改めて感じました。
そんな緊張の航路を抜けて、永代橋の正面に出た瞬間──その視界に現れたのが「晴海三兄弟」。
隅田川沿いに並び立つ高層マンション群「リバーシティ21」の3棟は、
ここまでの苦労を一気に洗い流してくれるような壮観なランドマークでした。
◆ 明治丸を横目に、湾岸エリアをクルーズ
隅田川から晴海運河へと入り、左手に現れるのは明治天皇の御召艦としても知られる「明治丸」。
こうした歴史的建造物を、水上から眺められるのも東京の河川クルーズの魅力です。
そこからは一転して、高層ビルが立ち並ぶ湾岸エリアへ。
晴海、勝どき、豊洲…と、東京の都市景観がぐっと洗練されていくのを肌で感じながら、
船は静かに、朝潮運河へと入っていきます。
高層ビルに囲まれた水路を進むと、
東京という街の“もうひとつの表情”が、静かに現れてくるような感覚がありました。
🌊 朝潮運河を抜けると──
朝潮運河を抜けると、左手に海王丸、正面にはレインボーブリッジが見えてきます。
東京湾らしい、ひらけた景色が広がるエリアです。
その後、有明運河を通って東京ビッグサイトを横目に眺めながら進みました。水面から見上げるあの独特なシルエット、思わず写真を撮りたくなってしまいます。
その先に現れるのが、堂々とそびえる東京ゲートブリッジ。くぐる瞬間はやはりちょっとワクワクしますね!
最後はディズニーリゾートを横目に、無事ニューポート江戸川へ帰港しました。
終わってみれば、三枚洲なんて可愛く思えるほどのスリルと達成感。
今回のクルージングは、技術も気力もフル稼働な、忘れられない航海になりました!
◆おわりに
前後編の2回に分けてお届けした今回の東京水路クルーズ、いかがでしたでしょうか?
プレジャーボートでしか体験できない水路の魅力、そしてリアルな操船の緊張感や楽しさが、少しでも伝わっていれば嬉しいです。
今後も、航行ルートの記録や橋・閘門・水門といった施設の紹介、さらにはプレジャーボートに関する実践的なノウハウまで──
さまざまな切り口で情報発信を続けていく予定です。
どうぞお楽しみに!